便秘
便秘とは
便が腸の中に長く留まっている状態を便秘といいます。具体的な目安としては排便が1週間に3回未満と言われてはいますが、回数よりも便が硬いかどうかが重要です。硬くて便が出しにくかったり、出るときに痛みを伴ったりする場合は便秘と考えて治療をする必要があります。
便秘の原因は、何らかの基礎疾患(病気)が引き金となって発症する器質性便秘と、病気が関係していない機能性便秘に大別されます。なお、小児では機能性便秘であることが多いです。
器質性便秘は、生まれつきの腸での病気が原因で便秘になるタイプ(鎖肛、ヒルシュスプルング病 など)と、腸以外の疾患(先天性甲状腺機能低下症、ダウン症 など)によって腸が動きにくくなるタイプに分けられます。
一方で、機能性便秘は、トイレトレーニングが適切でない、学校での排便を嫌がって過剰に我慢する、水分の摂取不足などが原因と言われており、乳児であれば母乳が不足している、離乳食を開始して間もないといった様々な状況も原因となり得ます。幼児期には、少食である、食物繊維が不足しているなども原因となります。このほか過敏性腸症候群による便秘も機能性便秘に含まれます。
便秘が原因で、何かしらの症状が現れ、それによって検査や治療が必要となった場合に、「便秘症」と診断されます。
治療について
便秘症と診断されれば、まずは浣腸やお薬を使用して腸にたまって硬くなった便を全て出してしまう治療から開始します(ステップ1)。そのうえで、便をためないようにお薬を使用して柔らかめの便を維持します(ステップ2)。いい便が維持できるようになれば、1日1回しっかり便を出す排便習慣を身につけていきます(ステップ3)。この3つのステップを経て、最終的にはお薬を使わなくても毎日排便があって、痛みを伴うことなくバナナのような便が出ている状態を維持できるようになるのが目標です。
便秘の治療には長い時間が必要になることが多いです。特にステップ2の維持療法の時期は、お薬をやめるとまたすぐに硬くなってしまうことも珍しくなく、根気強く治療をしていくことが重要です。
夜尿症
夜尿症とは
一般的に「おねしょ」と呼ばれるもので、日本夜尿症学会の夜尿症診療ガイドライン2021によると、「5歳以上で、1か月に1回以上夜間睡眠中の尿失禁があり、その状態が3か月以上つづくもの」と定義されています。
5歳では15%、7歳では10%の小児が夜尿症に悩んでいるとされています。そこから1歳ずつ年齢が上がるにつれて15%程度のペースで自然と治癒するようになりますが、全体の0.5%程度は、成人になっても完治していないとされています。
つまり、小学校入学時の段階では10人に1人が夜尿症を発症していることとなり、この時点でとても珍しいということはありません。ただし、小学校に入る段階で治まってなければ、一度当クリニックをご受診されることをお勧めします。確かに夜尿症はそのうち治ることが多いのですが、早めに生活指導を含む治療を受けることで、自然治癒を待つよりも早い段階で治る可能性が高くなります。また、夜だけでなく昼間にも尿失禁がある場合は受診していただいた方がよいと思います。ご相談だけでもかまいませんので、お気軽にお問い合わせください。
原因に関して
夜尿があることは決して本人やご家族のせいではありません。発症の原因としては、大きく3つの要因が考えられています。1つ目は睡眠から覚醒する能力が十分でないことですが、この原因はよくわかっていません。2つ目は身体機能の未熟さや膀胱の過剰な活動で、夜間に膀胱の容量が減少してしまうことです。3つ目は水分摂取が多すぎたり、尿を濃くして排尿をおさえるホルモンの分泌が不足したりすることで、夜間に尿量が増加することです。
治療法について
まずは、生活習慣を見直すことから始めて行きます。バランスのとれた水分摂取を心がけながら、就寝2~3時間前にはカフェインの摂取を避けるようにします。乳製品や塩分、フルーツなども利尿効果が高いため夕食後には控えた方が良いでしょう。就寝時間・起床時間を一定のリズムとし、寝る前のスマホやタブレットも良くありません。寝る前には必ずトイレに行くようにしましょう。
生活習慣の見直しだけで効果がみられることも少なくありませんが、なかなか改善しない場合には治療を開始します。夜間に尿を濃くして排尿をおさえるホルモンの分泌が不足しているケースでは、夜間の尿量を減少させる効果があるとされるホルモン薬を使用します。これには尿を濃くする働きがあり、尿そのものの量を減らすことになります。また、夜間に膀胱の容量が減少することで起きる夜尿症に関しては、膀胱の容量を増やすためのお薬を用います。このお薬は膀胱の緊張を改善させ、尿が溜まりやすい状態にしてくれます。
これらの治療以外にも、尿漏れを知らせるブザーが付いている夜尿アラームを利用するという方法もあります。ブザーで目が覚めトイレに行くことを続けることで、次第に睡眠中でも尿意を感じるようになり、アラームがなくとも起きられるようになっていきます。さらに、睡眠中の膀胱容量が増えたり、夜間の尿量が減ったりするなどの効果もみられるようになります。